VRIO分析とは?MBA流で学ぶ持続的競争優位の見つけ方|資源ベース論を実務で使う方法

目次

VRIO分析は、企業の「強み」を4項目に分けるだけのフレームワークではありません。競合がなぜ真似できないのか、その資源がどう収益につながっているのかまで考えることで、持続的競争優位の理由が見えてきます。

VRIO分析でありがちな「後付けの作文」

VRIO分析を勉強すると、まず出てくるのが次の4つです。

  • Value:経済価値
  • Rarity:希少性
  • Inimitability:模倣困難性
  • Organization:組織

企業が持っている技術やブランド、人材、ノウハウなどを、この4つの観点から評価していきます。

ここまでは、それほど難しくありません。

問題は、実際に企業分析を始めたときです。

たとえば、

「この会社は高い利益を上げている。だから経済価値のある資源を持っている」

「長年業界トップなので、競合には真似できない強みがある」

と評価してしまうことがあります。

一見すると正しそうですが、これでは少し弱い。

結果として成功している企業を見て、「成功しているから強い資源がある」と説明しているだけだからです。

これでは、なぜその企業が勝っているのかという原因を説明できていません。

VRIO分析で考えたいのは、

「この資源がなかったら、企業の利益は何によって削られていただろうか」

という問いです。

ここまで考えると、VRIO分析が単なる企業の強み探しではないことが分かってきます。

VRIO分析とは何を分析するフレームワークなのか

VRIO分析は、企業が保有する経営資源から競争優位を分析するフレームワークです。

背景にあるのが「資源ベース論(Resource Based View:RBV)」という考え方です。

資源ベース論では、企業ごとの業績の違いを、

「どの市場にいるか」

だけではなく、

「その企業が何を持っていて、それをどう使っているか」

から説明します。

たとえば同じ飲食業界でも、

ブランド力がある企業、仕入れに強い企業、店舗運営が非常に効率的な企業では、競争の仕方が違います。

この企業内部の違いを見るのがVRIOです。

5フォース分析とVRIO分析をつなげると見え方が変わる

VRIOを深く理解するうえで、かなり重要なのが5フォース分析との組み合わせです。

5フォース分析は企業の外側を見るフレームワークです。

代表的な5つの競争圧力があります。

  • 既存企業同士の競争
  • 新規参入の脅威
  • 代替品の脅威
  • 買い手の交渉力
  • 売り手の交渉力

VRIOは反対に、企業の内側にある資源を見ます。

両者は別々に習うことも多いのですが、実務ではつなげて考えたほうが分かりやすいです。

たとえば、

「この会社には強いブランドがあります」

だけでは、まだ分析としては弱い。

ここから、

「ブランドへの信頼が高いため、顧客が多少の価格差では他社へ移らない。その結果、買い手の価格交渉力を抑えられている」

と説明できれば、企業内部の資源と外部環境がつながります。

簡単に表すと、こんなイメージです。

外部の競争圧力

企業の収益を押し下げる

自社固有の資源・能力

競争圧力を弱める

高い収益性を維持する

私はVRIOを見るとき、この「どの競争圧力を止めている資源なのか」を考えると、かなり整理しやすいと思っています。

VRIOの4要素と競争優位の関係

VRIOでは、企業が持つ資源について順番に確認します。

V:価値R:希少性I:模倣困難性O:組織競争上の状態
NoNo競争劣位
YesNo競争均衡
YesYesNo一時的競争優位
YesYesYesYes持続的競争優位

この表を見るとVRIOの考え方が分かりやすくなります。

V:Value(経済価値)

最初に確認するのは、その資源が顧客価値や企業収益につながっているかです。

どれほど珍しい技術でも、顧客がお金を払ってくれなければ、戦略的な価値は高くありません。

価値がある資源とは、

「売上を増やす」

または

「コストを下げる」

方向に作用するものと考えると分かりやすいです。

R:Rarity(希少性)

価値のある資源でも、競合全社が持っていれば差別化にはなりません。

たとえば今では、ECサイトを持っていること自体は、多くの企業にとって珍しいことではありません。

一方、

「特定分野について10年以上蓄積された顧客データ」

「その企業しか持っていない流通ネットワーク」

などであれば、希少性が生まれる可能性があります。

I:Inimitability(模倣困難性)

ここがVRIO分析でも特に難しい部分です。

珍しい資源でも、競合が半年後にコピーできるなら優位性は長続きしません。

一時的な競争優位を持続的な競争優位へ変える壁が、模倣困難性です。

O:Organization(組織)

どれほど優れた資源があっても、企業がそれを使いこなせなければ意味がありません。

評価制度、組織構造、意思決定、情報共有、業務プロセスなどが資源と合っている必要があります。

このOは、VRIOの最後に付いているので脇役のように見えるのですが、実際にはかなり重要です。

模倣困難性を考えるポイント①「時間圧縮の不経済」

模倣困難性を説明するとき、

「高い技術力があるため模倣困難」

と書いてしまうことがあります。

ただ、「高い」というだけでは競合が真似できない理由になっていません。

そこで役立つ考え方のひとつが「時間圧縮の不経済(Time Compression Diseconomies)」です。

少し難しい言葉ですが、意味はシンプルです。

「10年かけて身につけたものを、10倍のお金を使って1年で再現できるとは限らない」

という話です。

職人の技術をイメージすると分かりやすいでしょう。

熟練者が10年間、何千回も失敗しながら身につけた感覚を、マニュアルだけ渡されて数カ月で完全にコピーするのは難しい。

企業でも同じことがあります。

長期間にわたって蓄積された、

  • 製造ノウハウ
  • 顧客との関係
  • 組織文化
  • 開発プロセス
  • 現場で共有されている暗黙知

などは、お金だけでは短期間で取得できません。

これが競合にとって模倣コストになります。

模倣困難性を考えるポイント②「因果関係の不明瞭さ」

もうひとつ重要なのが「因果関係の不明瞭さ(Causal Ambiguity)」です。

これも名前は難しいのですが、

「なぜその会社が強いのか、外から見ても完全には分からない」

状態だと思えばよいでしょう。

たとえば繁盛しているレストランを見て、

「料理がおいしいからだ」

と思ったとします。

ところが実際には、

食材の仕入れ、料理人の技術、接客、店内の空気、メニュー構成、価格、予約管理などが複雑に組み合わさって人気店になっているかもしれません。

競合が料理だけを真似しても、同じ店にはなりません。

企業の競争力も同じです。

一つの技術だけではなく、複数の資源が組み合わさって競争力を生み出しているほど、模倣が難しくなります。

単独の資源より「資源の組み合わせ」が強いことがある

VRIO分析では、

「特許」

「ブランド」

「人材」

のように、一つずつ資源を書き出したくなります。

もちろん、それ自体は間違いではありません。

ただ、競争力の源泉がひとつの資源だけとは限りません。

たとえば、あるメーカーが持っている競争力が、

技術A

製造ノウハウB

長年の顧客データ

熟練技術者

特殊な品質管理プロセス

から生まれている場合です。

競合は一つをコピーしただけでは追いつけません。

こういう状態はVRIOではかなり強い。

資源単体を見るというより、

「複数の資源がどう組み合わさって顧客価値を生んでいるのか」

を見る必要があります。

VRIだけでは足りない。最後にO(組織)が必要になる

VRIOで意外と見落とされやすいのが、最後のOです。

たとえば、

V:価値がある
R:珍しい
I:競合が真似しづらい

ここまでそろった素晴らしい技術を企業が持っていたとします。

それでも、営業部門がその技術を理解していなかったり、商品化の意思決定に3年かかったり、開発部門とマーケティング部門がまったく連携していなかったらどうでしょう。

市場ではうまく使えません。

良い食材を持っているのに、厨房が機能していない状態に少し似ています。

そこで必要になるのがOrganization、組織です。

コスト優位戦略と差別化戦略では必要な組織が違う

Oを考えるときには、「良い組織とは何か」と抽象的に考えるよりも、戦略との相性を見るほうが分かりやすいです。

コスト優位を狙う企業

コスト競争をする企業では、効率がかなり重要になります。

同じ商品を大量につくり、できるだけ無駄を減らす。

そのため、

標準化された業務
意思決定ルールの統一
ノウハウの共有
生産性管理

などが有効になりやすくなります。

マクドナルドの店舗オペレーションのように、「誰がやっても一定水準になる仕組み」を想像すると分かりやすいでしょう。

差別化を狙う企業

一方、差別化では事情が変わります。

顧客の要望や技術トレンドに合わせて変更する必要があるため、現場の裁量が必要になるケースがあります。

開発、営業、マーケティングなどが頻繁に情報交換し、その都度調整する組織のほうが向いている場合もあります。

ある程度の非効率を許容してでも、独自性を守るわけです。

どちらの組織が優秀かという話ではありません。

戦略と組織が合っているかどうかが問題です。

高級キーボードを例にVRIOを考えてみる

たとえば、高価格帯のキーボード市場を考えてみます。

一般的なキーボード市場では、大手メーカーが大量生産によってコストを下げられます。

小さなメーカーが同じ土俵で価格競争をすれば、不利になる可能性があります。

そこで、

「プロのプログラマー向け」

「独特の打鍵感」

「非常に高い耐久性」

といった特殊なニーズを狙ったとします。

独自のスイッチ技術や設計ノウハウがあり、それが長年の開発経験から生まれているのであれば、VRIになり得ます。

さらに、

ユーザーから細かなフィードバックを集める

開発者が改善する

熱心なユーザーが評価する

さらにデータとノウハウが蓄積される

という仕組みが組織として回っていれば、Oも成立します。

すると、単なる「高性能キーボード」という商品ではなく、

「技術+顧客コミュニティ+開発プロセス」

という複合的な資源になります。

こうなると、大手メーカーも製品スペックだけ真似して追いつくことが難しくなります。

VRIO分析で使いたい5つの質問

実際に企業分析をするときは、いきなりV・R・I・Oを埋めるより、次のような質問をしたほうが考えやすいです。

1. この資源はどの競争圧力を弱めているのか

5フォースとの接続です。

価格競争なのか、新規参入なのか、顧客の乗り換えなのか。

まずここを特定します。

2. この資源がなくなったら何が起きるのか

反対から考えます。

仮にブランドが消えたら値下げが必要になるのか。

販売ネットワークがなくなったら顧客獲得コストが増えるのか。

こう考えるとValueが見えます。

3. 競合はいくら使えばコピーできるのか

単純に「模倣困難」と書かず、

時間
資金
人材
ノウハウ

のどこに障壁があるかを考えます。

4. コピーするのに何年かかるのか

ここで時間圧縮の不経済が効いてきます。

10年かけて蓄積したノウハウなら、新規参入企業が短期間で追いつけるとは限りません。

5. 自社はその資源を本当に使い切れているのか

最後がOrganizationです。

経営資源が存在していることと、それを収益化できていることは別です。

VRIO分析では「強み」を探すより「因果関係」を探す

VRIO分析をしていると、どうしても

「この会社の強みは何だろう」

と考えたくなります。

それ自体は悪くありません。

ただ、実務ではもう一段掘り下げたほうが使える分析になります。

たとえば、

「ブランド力が強み」

で止めずに、

ブランドへの信頼が高い

顧客の乗り換えが減る

価格弾力性が低くなる

競合との値下げ競争を回避できる

利益率を維持できる

と因果関係をつなげます。

この線が描ければ、「なぜ勝てるのか」がかなり説明しやすくなります。

VRIO分析と5フォース分析を統合すると戦略のストーリーが見える

戦略を考えるとき、

外部環境だけを見るポジショニング論と、企業内部を見る資源ベース論は対立する考え方のように説明されることがあります。

実務では、両方を使えばいいと思います。

たとえば、

「業界では大手メーカー同士の価格競争が激しい」

という5フォース分析の結果が出たとします。

そのうえで、

「自社は特殊用途に特化した顧客層を持っている」

「長年蓄積した独自技術がある」

「開発者とユーザーが直接やり取りする組織がある」

というVRIOの結果があれば、

大手との正面衝突を避けながら、ニッチ市場で高い利益率を維持する戦略が説明できます。

外部環境
×
内部資源
×
組織

この組み合わせを見ると、戦略の全体像がかなり見えやすくなります。

持続的競争優位は「一度つくれば終わり」ではない

ここもVRIOを考えるうえで注意したいところです。

VRIOでV・R・I・Oが全部Yesだったからといって、永久に競争優位が続くわけではありません。

顧客ニーズは変わります。

技術も変わります。

規制や流通構造が変化することもあります。

以前は価値があった資源が、数年後には価値を失うこともあります。

その意味では、持続的競争優位は「完成した資源」というより、

市場の変化に合わせて、資源の組み合わせや使い方を更新し続ける状態

と考えたほうが現実に近いでしょう。

まとめ:VRIO分析で見るべきなのは「なぜ競合が追いつけないのか」

VRIO分析を使うときに、押さえておきたいポイントは次の4つです。

  • VRIOは企業の強みを4項目に分類するだけのフレームワークではない
  • 5フォースと組み合わせ、「どの競争圧力を弱めているか」を見ると理解しやすい
  • 模倣困難性では、時間圧縮の不経済や因果関係の不明瞭さまで考える
  • VRIがそろっていても、それを活用できる組織Oがなければ持続的競争優位にはなりにくい

企業分析をするときには、

「この会社には何があるか」

だけで終わらせず、

「それによって競合は何ができなくなっているのか」

まで考えてみると、VRIO分析がかなり面白くなります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

上級ウエブ解析士
「地域にこそ正しいマーケティングを」モットーにインターネット広告、SNS運用サポート、CRMといったフルファネルでのマーケティング支援が専門。大手アパレル企業のMD職を経験した後、地元広島でもマーケティングの仕事ができることを求めて2003年(株)電通西日本入社。大手移動体通信のプロモーションを約10年担当し(株)電通や(株)電通デジタル・ネットワークスへの出向も経験した後、電通西日本のデジタルビジネス部門の黎明期を牽引。自らの知見が地域創生の一助になることを目指し2019年デジタルマーケティングイノベーションラボ(株)を創業。地元企業のEC支援やメディア企業のデジタルマーケティング強化の支援を行っている。乗り鉄。尊敬する人 小林一三翁

コメント

コメントする

目次