『MBA実践録#02──経営・マーケティング戦略基礎──「顧客に伝わる戦略」を描くには──経営戦略・マーケティング基礎の学びから』

ブログ

2024年にMBAを取得してから約1年。今回は、第2回として「経営戦略・マーケティング基礎」の講義で得た学びをもとに、実務への接続について綴ってみたいと思います。

私にとって、この講義での最大の学びは、「戦略やマーケティングの型を知ること」ではなく、「その型がどのように実務の中で意味を持つか」を実感を伴って捉え直すことでした。以下では、私自身が実際に体感した気づきを中心に、実務に活かす観点で整理していきます。

KSFを外部環境から捉えるという視点

まず押さえておきたいのが「KSF」という用語です。これは「Key Success Factor(キー・サクセス・ファクター)」の略で、日本語では「重要成功要因」と訳されます。つまり、ある業界で企業が成功するために欠かせない条件のことを指します。

私が最初のケーススタディで痛感したのは、「自社の強み」とKSFを混同していたという点でした。成功している企業の特徴を無理やりKSFに整合させようとしていたのです。しかし講義を通じて、KSFはあくまで外部環境──つまり業界全体の構造、競合の動き、顧客の変化など──から導き出すべきものであり、「自社の都合」とは切り離して考えるべきであるという視点に立ち返ることができました。

この「外部環境からスタートする」戦略の考え方は、私の実務における思考の順序を大きく修正してくれました。

バリューチェーンは“価値創出の構造”である

次に触れたいのが「バリューチェーン(Value Chain)」という概念です。これは、企業が製品やサービスを顧客に届けるまでの一連の活動の中で、どの工程がどのように価値を生み出しているのかを分析する手法です。

従来の私は、バリューチェーンを単なる業務フローの可視化ツールとして扱っていました。しかし講義では、「KSFにどう貢献しているか」を基準にバリューチェーンを再構築するという視点を学びました。つまり、「どの工程が、業界で成功するための要因に直結しているのか」を考えるということです。

特に印象に残っているのは、バリューチェーンの構成要素同士がどう“横に繋がっているか”を意識することの重要性です。例えば、製造と販売、販売とアフターサービスがしっかりと連動していることで、模倣しにくい戦略が構築される。この「ストーリー性のある戦略設計」は、実務においてもそのまま活かせる感覚がありました。

顧客起点で戦略を捉え直す──STPという考え方

「STP」は、マーケティングの基礎となるフレームワークの一つで、「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の頭文字を取ったものです。

  • セグメンテーション:市場を顧客の特徴やニーズに応じて細分化すること
  • ターゲティング:その中から自社が狙うべき顧客層を定めること
  • ポジショニング:選定した顧客に対して、自社の商品・サービスの価値をどう位置づけるかを明確にすること

この考え方を通じて私が痛感したのは、「マーケティングとは商品ではなく、“顧客の知覚”の中で勝負する」ということでした。つまり、スペックの優劣ではなく、「顧客がどう感じるか」が全てだということ。

この視点を持つことで、私の中でマーケティングという営みがより本質的なものとして腑に落ちました。さらに、「KBF(Key Buying Factor:購買決定要因)」という概念──顧客が商品・サービスを選ぶ上で重視する要素──についても、「低価格×高品質」といった抽象的な表現ではなく、顧客ごとの文脈や期待に根差した具体的な言葉で語る必要性を実感しました。

業界を“定義する”という問い

「業界分析をしよう」と言われたとき、つい「自動車業界」「小売業界」といった大括りで考えてしまいがちです。しかし、講義を通じて学んだのは、「業界の定義そのものが戦略の出発点になる」ということでした。

たとえば、同じ業種でも顧客ターゲットやコスト構造が異なれば、それは実質的に別の“業界”だと捉えるべきです。私自身、これまでは「会計業界」という枠で一括りにしていた部分がありましたが、「誰にどんな価値を提供しているのか」によって、自社が置かれている業界の構造は大きく異なることを実感しました。

この“業界の再定義”は、私のように複数の中小企業と関わる立場にある者にとって非常に重要な視点です。分析の質を高め、戦略の選択肢を明確にするための鍵になると感じています。

中小企業経営にどう活かすか

この講義を通じて得た学びは、多くの中小企業においても極めて実践的な価値を持つと感じています。特に、以下の3点は即座に実務へ活かすべき要諦だと思います。

  1. 業界構造の正しい把握:自社の現状分析を始める前に、まずは「この業界で成功するには何が必要か(=KSF)」を外部環境から見極める。この発想は、独善的な戦略を防ぐための前提条件になります。
  2. 価値創出プロセスの可視化と連動:バリューチェーンを通じて、どの活動がKSFに貢献しているかを明らかにし、その活動同士のつながりまで設計すること。これは、中小企業が限られたリソースで最大の効果を発揮するための設計力に直結します。
  3. 顧客理解の徹底と明確なポジショニング:顧客のニーズを細かくセグメントし、対象とする顧客に対して、どのように自社の価値を伝えるかを明確にする。この思考は、価格競争に巻き込まれず、独自の価値提案を構築するために欠かせないプロセスです。

今後もこのシリーズでは、MBAでの学びを私自身の体験と実務に引き寄せて、ひとつずつ紐解いていきたいと思います。次回は「ファイナンス・アカウンティング」や「組織・リーダーシップ」など、別のテーマを掘り下げていく予定です。引き続き、お付き合いいただけると嬉しいです。

コメント