AI中級者への道:まず“構造”を持て——文章生成だけではない、AI課題解決マップの全貌

ChatGPTの登場以降、「とりあえず質問してみる」「文章を要約・整形してもらう」といったAIの使い方は一気に広まりました。私の周囲でも、「メール文章をAIに作ってもらうようになった」「議事録が楽になった」という声はよく聞きます。

しかしその一方で、私はこう感じることが増えています。

「多くの人は、AIで“何ができるか”を、まだ体系的に理解していない」

これは、「AIを使えていない」以前の問題です。使えていないことすら、気づいていないのです。

なぜなら、彼らの頭の中には“構造”がないからです。AIの可能性を地図のように捉え、どの分野でどんな課題がどう解決できるか、という構造化されたマップ(≒思考のフレーム)を持っていない。

これは、AI中級者に進むための最大の壁であり、だからこそ今、「AI課題解決マップを頭に持つこと」が、中級者への第一歩になります。


2. AI課題解決マップ:全体構造を捉える

以下に、私自身が実務と探究の中で構築してきた「AI課題解決マップ」の一例を示します。これは完成形ではありませんが、現時点での有効な視点の整理です。

◆AIでできることを構造的に整理する

AI活用領域を、大きく以下の4領域に分類します。


【1】情報と言語の処理領域(テキストAI)

  • 文書生成・要約・翻訳・校正
  • 構造化されていない情報の再整理(議事録、取説、契約書など)
  • アイデア出し、企画のたたき台
  • SEO記事、広報文、採用コピーなどの大量生成

【2】数値・データの処理領域(データAI)

  • 表やCSVの自動解析/グラフ化/インサイト抽出
  • 売上・コストデータの要因分析/異常検知/予測
  • KPI可視化や、意思決定のシミュレーション(“もし~なら”のモデル設計)
  • ノーコードBIツールとの連携による経営ダッシュボード化

【3】画像・映像・音声の生成/編集領域(クリエイティブAI)

  • サムネイル/広告バナー/製品イメージの自動生成
  • 商品紹介動画/会社紹介動画の自動作成(音声合成含む)
  • 社内教育動画/ナレーション入りマニュアルの自動化
  • 音楽やジングル制作、ポッドキャストの編集支援

【4】業務アプリ・システム構築領域(エージェント+コードAI)

  • Python/JavaScript等のコード自動生成による業務アプリ開発
  • ノーコード+AIでの業務フロー構築(例:在庫管理、顧客対応)
  • RPAとの統合によるバックオフィス自動化
  • 個別業務特化の「社内AIエージェント」構築

この4領域を地図として持っているかどうか。それによって、AI活用の発想の広がりはまったく違ってきます。


3. なぜ「構造」が必要なのか?

構造を持っていない人は、AIに対して「なにかできるらしいけど、自分にはまだ関係ない」と無意識に線を引いてしまいます。逆に構造を持っている人は、日常の業務課題に対して「このタスク、AIで置き換えられないか?」という視点が自然と生まれます。

例えば、

  • 毎月手作業でまとめていた営業レポート → データAI+定型文自動生成で一発出力
  • 自社サービスの紹介資料 → 画像AI+テキストAIでスライド初稿を自動作成
  • 顧客問い合わせ対応 → ChatGPT API+簡易チャットUIで社内AIカスタマーを構築

といった具合に、課題と解決手段が、線でつながっていくのです。

これは、単なる「プロンプトの上手さ」とは次元が違う、“思考のOS”の話です。


4. AI中級者とは、「構造を持つ人」である

こうしたマップを頭に入れて日常業務を眺め直すと、「AIで自動化できる部分」や「AIに相談すれば突破口が開ける部分」が見えてきます。

逆にいえば、どれだけ文章を生成できても、プロンプトの技術があっても、構造を持っていなければAI中級者とは言えないと私は考えています。

さらに言えば、これからは「業務の構造化 × AIの構造理解」のかけ算で、どれだけ“自社専用エージェント”を創れるかが差を生みます。情報整理だけでなく、「実行するAI」への移行がはじまっているのです。


5. まとめ:「分かっていないことを、分かる」ために

AIに対して、「何ができるか分からない」と感じること自体は悪いことではありません。ただ、分からないままで手を出さない状態は、もはや“リスク”といえる時代です。

まずは、「AIってこんなことができるのか」を構造的に可視化する
そして、自社業務に当てはめてみる。
その上で、必要なプロンプトやツールを探せばよいのです。

つまり、AI中級者への道とはこうです。

「プロンプトが上手くなること」ではなく、
「構造を持って、AIを問いに引き寄せられるようになること」。

それが、AI時代の学び方であり、使いこなし方の本質だと私は思います。

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