経営デザインシートは、持続可能な成長に向けて「価値を生み出すしくみ」を可視化し、未来を構想するための経営ツールです。
1. 経営デザインシートとは?
経営デザインシートは、企業が「どのように価値を創造してきたか」「今後どう成長したいか」を明確にする思考ツールです。未来に向けて企業の構想力を高めるための地図のような存在です。
経営デザインシートは、内閣府・知的財産戦略本部の「知財ビジネスタスクフォース」により2017年から開発が始まりました。目的は、企業の持続的成長に必要な「価値創造のしくみ」を可視化し、未来を構想するための思考ツールを提供することです。2018年には「知的財産戦略ビジョン」にも盛り込まれ、全国の企業や自治体への普及が推進されました。その後、日本知財学会に「経営デザイン分科会」が新設され、活用事例の共有や普及活動が本格化。さらに2020年には「価値デザイン経営ワーキンググループ」が設置され、大学・中小企業・金融機関など現場レベルでの活用を支援する体制が整備されました。このように経営デザインシートは、官民連携による「未来志向の経営」を支えるツールとして進化し続けています。
2. なぜ今「経営をデザインする」のか?
市場環境が急速に変化する今、技術力だけでは生き残れません。顧客の多様なニーズに対応するには、「経営のあり方」自体を再構築する視点が必要です。
3. 経営デザインシートの目的と効果
- 過去と未来の価値創造構造を見える化
- 経営課題の発見・整理
- 社内外でビジョンを共有する対話ツール
- 事業承継や資金調達の際の説明資料としても活用可能
4. 「価値を生み出すしくみ」の構造
経営デザインシートでは、以下の3要素を通して価値創造を考えます。
要素 | 内容説明 |
---|---|
資源 | ヒト・モノ・カネ・知的財産など自社のリソース |
ビジネスモデル | 資源をどのように価値へ変換しているか |
価値 | 顧客や社会にどんな利益や意義を提供しているか |
5. 4ステップで進める経営デザイン
A. 想い・理念の明文化
企業の存在理由や創業者の想いを再確認する。
B. これまでの価値創造の可視化
自社の資源・勝ちパターン・選ばれた理由を整理。
C. これからの価値創造の構想
将来どんな社会的価値を提供したいかを描く。
D. 今から何をすべきか
必要資源・課題・実行プランを明確化。
6. 思考のコツと「知財」への理解
- バックキャスト思考:未来から現在を逆算する発想で、新しいビジネスモデルを描く
- 広義の知財:特許だけでなく、ブランド、文化、人材、人脈も重要な資産として再評価する
7. 作成時の注意点と進め方
- 項目の順序は自由
- 最初はラフに、徐々に具体化
- 社内外のメンバーと対話しながら進める
- 応用編や簡易版も活用して柔軟に運用
8. まとめ:経営の未来を描こう
経営デザインシートは、単なるシートではなく、「自分たちは何者か」「何を成し遂げたいのか」を深く考えるための“鏡”です。変化の激しい現代にこそ、企業の根幹を見つめ直し、新しい未来を創造するツールとして活用してみましょう。
コメント