『MBA実践録#03─組織行動とリーダーシップ─リーダーシップは「才能」ではなく「技術」である──組織行動と私の気づき』

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Business people using whiteboard in meeting

2024年にMBAを取得してから1年。今回は「組織行動とリーダーシップ」の講義を通じて得た数々の気づきを、自分の実体験と紐づけながら振り返ってみたいと思います。私にとってこの科目は、過去の実務経験を理論的に再解釈する機会であり、自分の在り方と改めて向き合う時間でもありました。

経営の根幹は「人」である──実行フェーズに潜む落とし穴

MBAで学ぶまで、私は戦略や財務の重要性にばかり目が行きがちでしたが、この講義で改めて実感したのは「最終的に企業経営を左右するのは“人”である」という事実です。構想を描き、戦略を立てたとしても、それを実行するのは常に「人」。その実行段階での温度差やパフォーマンスの差が、企業の成果に直結します。

私が関わっている中小企業では、「ヒト・モノ・カネ」の中でも圧倒的に“ヒト”のウェイトが高いと感じています。むしろ、「ヒト・ヒト・ヒト」と言っても過言ではありません。経済産業省が推進している「人的資本経営」では、企業価値向上の源泉が人材であると明言されており、人的資本の可視化と活用が経営の最重要テーマになっています。これはまさに私が日々感じていることと強くリンクしています。

「リーダー」と「リーダーシップ」は違う

私は以前、自分のチームで「全員がリーダーシップを持とう」という呼びかけをしていました。しかし、メンバーの反応は様々でした。中には「自分はそういうタイプじゃない」「立場的に関係ない」と冷めた表情を浮かべる者もいて、正直、もどかしさを感じていました。

この講義を通じて、「リーダー」という“肩書き”と、「リーダーシップ」という“行動”を明確に分ける必要性を理解しました。「リーダーだからリーダーシップを発揮しなければならない」という短絡的な会話からはボタンの掛け違いが生じることが常であること。
そしてリーダーシップとは、才能ではなく誰もが後天的に習得可能な技術であるということ。
個々のキャリアプランと紐付けて「なぜ自分にリーダーシップが必要なのか」を一緒に考えていく発信が、これからのマネジメントには欠かせないと感じました。

パス・ゴール理論が教えてくれた「柔軟性」

パス・ゴール理論というマネジメント理論は、私にとって目から鱗の学びでした。これは、メンバーの能力や環境要因に応じて、指示型・コーチ型・支援型などのスタイルを柔軟に切り替えるべきだという考え方です。

私はこれまで、プロジェクト開始時に「エンパワメントMTG」と称してメンバーとマネジメントスタイルの合意形成を行ってきました。しかし、案件の難易度やメンバーの力量はやってみないと分からない。結果、途中でスタイルが合わず、成果が上がらないという事態も多く経験しました。

この理論を学び、「途中でスタイルを見直しても良いのだ」という柔軟な発想が大きな気づきでした。これまで、マネジメントとは「決めたことをやり切らせる」という固定観念がありましたが、委任型から指示型、あるいは逆に変更することで、プロジェクトの推進力は大きく変わる可能性があります。これはまさに、実務で直ちに活かせる知見でした。

対話を避けない──「感情」への理解

組織内の摩擦や変革の難しさの根本には、多くの場合「感情」があります。「伝えたつもり」で「全く伝わっていない」ということがどれだけあるか……私自身、過去に何度も「何度言ったら分かるんだ」と苛立ち、場を凍り付かせてしまったことがありました。

この講義を通じて、「人間はそもそも変化を避けたい生き物である」「自己保存のバイアスがある」という前提に立ち、粘り強く、丁寧に対話を重ねることの重要性を学びました。

とはいえ、どこまで粘ればいいのか、どこまで信じればいいのか。その問いには今も明確な答えがありません。ただ、変化のプロセスにおいて「対話から逃げない」ことこそが、リーダーの資質なのだと感じています。

「信念」を持ち、ぶつかる覚悟を持つ

私が特に印象的だったのは、「ぶれない信念こそが、本物の信頼関係を生む」という言葉でした。私はこれまで、共感と調和を大切にしてきた結果、いつの間にか「自分は何をしたいのか」が希薄になっていたように思います。

組織の中で軋轢を恐れず、「私はこうしたい」と自ら旗を立てることで初めて、真の仲間が集まり、濃い信頼関係が築かれる。その覚悟が、これからのリーダーには必要だと痛感しました。

チーム単位で始める風土改革──7Sの因果構造から考える

組織風土の改革といえば、全社施策やトップのメッセージが注目されがちです。しかし講義での学びからは、「風土改革はチームから」という逆のアプローチが強調されていました。

私はこれまで、「組織風土改革は重要」という言葉にどこか曖昧なまま向き合っていた気がします。今回、7S(Strategy、Structure、Systems、Shared Values、Skills、Style、Staff)のフレームワークを通じて、初めてその“因果構造”を実感を持って理解できました。

「ハードの3S(戦略・構造・制度)」と「ソフトの4S(価値観・スキル・スタイル・人材)」が有機的に結び付き、全体として一貫性を持ち組織成果に向かって動いている状態こそが“良い風土”であり、それが崩れると組織はどこかで機能不全を起こす。逆に言えば、特定の施策でうまくいかない理由が、別のSの要素に起因しているという視点が、今までの自分には欠けていたのだと気付かされました。

また、講義で学んだ「ソフトの4Sは、“想い”が結びつくことで模倣困難な強みになる」という考えは、組織風土改革の核心を突いていると感じました。表面的な制度設計やスローガンではなく、現場の対話と共感が連鎖して初めて、真の変革が起きるのだと理解しています。

今の自分と、これからの「人との向き合い方」

私は今、組織を離れてフリーランスとして活動しています。日々顧客に全力で向き合える一方で、仲間とビジョンを共有しながら進む感覚に、どこか寂しさを覚えるようになりました。

この講義での学びを通じて、リーダーシップとは「特別な人だけが持つ資質」ではなく、誰もが学び、発揮し得る“技術”であると理解しました。そして私はこれからも、「人を活かすこと」に全力を尽くしていきたい。

今関わっている顧客、そしてこれから出会う経営者の方々の人材や組織の悩みに、自分の経験とこの学びを重ね、少しでも役に立てるよう歩み続けたいと思っています。


次回は「人材マネジメント」の分野をテーマに、実務との接続を掘り下げていく予定です。引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです。

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