株主と経営者の関係には利害のズレが存在します。プリンシパル・エージェンシー理論は、そのズレによる問題と対策を明らかにします。
プリンシパル・エージェンシー理論とは?
プリンシパル・エージェンシー理論(Principal-Agent Theory)とは、「依頼する側(プリンシパル)」と「依頼を受ける側(エージェント)」の間に、情報の非対称性や利害の不一致があるとき、どのような問題が起こるか、そしてそれをどう解決するかを分析する理論です。
経済学や経営学でよく使われ、特に企業経営では「株主(プリンシパル)」と「経営者(エージェント)」の関係を理解するうえで重要です。
株主と経営者の利害対立とは?
株主は「企業価値の最大化」を求める
株主は自ら経営に関わることなく、投資によって利益(配当や株価上昇)を得たいと考えています。
経営者は「自己の利益最大化」を求める場合も
経営者は高い報酬や名声、仕事の安定を求めることもあり、株主の意向とはズレる行動をとる可能性があります。
例:
・株主が望むコスト削減よりも、経営者が自分の評判のために大型の新規投資を行う
・利益を犠牲にしてでも、企業の規模拡大を優先する
情報の非対称性とモラルハザード
この関係において問題となるのが「情報の非対称性」です。
株主は日々の経営の詳細までは把握できず、経営者の判断の妥当性を完全に監視するのが難しいのです。
その結果起こる問題
- モラルハザード(道徳的危険):経営者が自分に都合のいい行動をとる
- アドバースセレクション(逆選択):能力のない経営者が選ばれてしまう可能性
エージェンシー問題への対策
この理論では、こうした問題を防ぐために「インセンティブ設計」と「モニタリング体制」が重要だとされています。
対策例
対策 | 内容 |
---|---|
ストックオプション | 株主と同じ立場に近づけることで、企業価値向上へのインセンティブを与える |
業績連動報酬制度 | 会社の成果と報酬を連動させる |
社外取締役制度 | 外部の視点で経営を監視し、ガバナンスを強化する |
定期的な情報開示 | 株主との情報の非対称性を減らす |
日常生活へのたとえで理解する
たとえば、親(プリンシパル)が子ども(エージェント)におつかいを頼んだ場合を考えてみましょう。
子どもはお釣りをちょろまかしたり、ついでに自分のお菓子を買ったりするかもしれません。
親がそれを防ぐには「レシートを必ず見せさせる」「余ったお金でご褒美を買える仕組み」などの工夫が必要ですよね。
これがまさにプリンシパル・エージェンシー理論の考え方です。
まとめ
プリンシパル・エージェンシー理論のポイント:
- 株主(プリンシパル)と経営者(エージェント)は利害が異なる
- 情報の非対称性があることで、経営者が自己中心的な行動をとるリスクがある
- 問題を解決するにはインセンティブと監視体制が必要
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