「経理業務を効率化したい。でも何から手をつけていいか分からない」
中小企業の経営者と話す中で、最も多く聞く言葉の一つです。
手作業による仕訳入力、紙の請求書の処理、月末の残業……。経理業務は「毎月のルーティン」として当たり前に行われていますが、その実態は属人化しやすく、経営者の見えないところで大きな負担になっています。
「この業務、本当に必要なのだろうか?」
「もっと効率化できるのでは?」
と疑問を持ちつつも、ITやAIといった言葉のハードルの前で思考が止まってしまう──。それが、多くの中小企業に共通する現状ではないでしょうか。
“心理的ハードル”の正体は「曖昧さ」
AIや自動化という言葉に構えてしまうのは、それが“分からない世界”だからです。
- 何ができるのかが分からない
- どのツールを使えばいいのか分からない
- 誰がやるのかも決まっていない
つまり、“曖昧なもの”に対する不安が、自動化の第一歩を阻んでいるのです。
ではどうすれば、この曖昧さを解消できるのでしょうか?
解像度を上げるには「業務の棚卸し」から
まず必要なのは、「何がどれだけ手作業で行われているか」を言語化することです。
- 請求書の受け取りと入力
- 経費精算の確認と振込手配
- 月末の仕訳入力
- 毎月の支払一覧作成
これらを一つひとつ書き出していくだけでも、経理業務の“地図”が見えてきます。
ただ、それでも「これが自動化できるのかどうか」が分からない。
そこで、今注目したいのがChatGPTの活用です。
ChatGPTとの“壁打ち”が、経理改革を加速する
ChatGPTは、いまや単なるチャットツールではありません。
経営者の頭の中にある「もやもや」を整理し、業務改善のヒントをくれる“壁打ち相手”になります。
たとえば、こんな問いかけをしてみてください:
「うちは請求書がPDFで届くけど、毎月手でExcelに打っている。何か自動化できる方法はある?」
「月次の支払予定表を毎回Excelで手入力しているけど、もっと効率化できる?」
こうした質問に対して、ChatGPTは次のような返答を返してくれます:
「その業務はAI-OCRとRPAを組み合わせることで自動化が可能です。具体的には、invoxやバクラクといったツールがあります。Excelの自動更新にはPower Automateが使えます。」
さらには、「その作業、毎月何件くらいありますか?」「業務の発生タイミングは?」と、こちらの思考を深掘る質問を返してくることもあります。
これによって、曖昧だった経理業務の輪郭が、ぐっと明確になるのです。
自動化・効率化のための具体的なツールと活用例
業務を可視化したあとは、実際にどんなツールが使えるのか?以下に代表的なものをカテゴリ別に紹介します。
● 請求書・領収書処理:AI×OCRツール
例:invox、バクラク、TOKIUM
紙やPDFの請求書を読み取り、仕訳候補を生成。仕訳の確認・承認フローも一体化可能。
● 記帳業務:クラウド会計ソフト
例:マネーフォワード、freee
銀行口座やカードと連携し、自動仕訳を学習。仕訳精度も向上中。
● 定型作業:RPA・自動化ツール
例:Power Automate、batton
月末の請求データをExcelから抽出し、PDFに変換してメール送信など、定型フローを自動化。
● ChatGPT:文書生成・マニュアル化支援
経費精算ルールの説明文、仕訳基準のガイドライン作成、社内への案内文なども瞬時に作成可能。
「一気に全部」は不要。まずは“ひとつ”から
大事なのは、「何から始めるか」を見極めることです。
たとえば、請求書のAI読取だけを導入しても、月10時間の作業削減につながるケースもあります。
また、「自動化の成功体験」は社内に小さな風穴を開けます。
それが次の改善の原動力になります。
経理の役割を“作業”から“経営支援”へ
自動化・効率化の目的は、人を減らすことではありません。
人の知恵を活かすために、手作業を手放すこと。
経理担当者が数字の背景を読み取り、経営に示唆を与える。
その時間を生み出すために、AIやツールが存在するのです。
おわりに:改革は“壁打ち”から始まる
「AIなんてうちには無理」と思っていた経営者が、ChatGPTとの会話を通じて経理改革を進め始める──。
そんな事例が、現実に増えてきています。
中小企業だからこそ、限られた人材で“考える力”が求められます。
その補助輪として、AIという存在は大きな意味を持つのです。
まずは、問いかけてみることから。
「この作業、自動化できる?」とChatGPTに聞いてみてください。
その一歩が、経理業務を、そして会社を変えるきっかけになります。
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